遅れるな、タメろ!

キングさんの歌手全般に言えることですが、岡ゆう子さんのボーカルはとにかく正確無比。1音たりとも音符を外さず、それでいて楽譜の束縛を何ともしない自由な表現力とフレージング・テクニックはまさにプロの中のプロ。

コンサート取材中、耳を澄まして1音1音、清聴して確信しました。プロの歌唱はココが違う! 本ブログをご覧の皆さんに伝授申します。

「タメる」と「遅れる」は違う! ゆう子さんの歌は、フレーズの頭を決して逃しません。そしてより感情的な表現をしたい時に、フレーズ後半を「タメる」。フレーズの語尾でどんなに歌をタメても、次のフレーズでは頭をピシっと合わせる!

では頭を合わせるべきフレーズの区切りはどこ? 歌の場合、規則的に4小節毎とか決まっているとは限りません。そうお分かりですね。歌詞の言葉です。

下記「あなたが好きです~」の「あなたが」はキチッと譜面の縦割りに合わせて、「好きです~」は小節線を越えて、つまり「タメて」もいい訳です。そいでもって、次の「わたしはバカです~」の「わたしは」でまたピシっと頭を合わせる。

 更に言わせていただけば、こういう技の見せどころは、1コーラスに一ヶ所だけ、もしかして1曲に一ヶ所だけでいいのです。

先日インタビューしたある歌手も言うとりました。「自分らにはステージは日常だけど、アマチュアやプロの卵の皆さんは、コンテストやオーディションの1コーラスにすべてを懸ける。1曲まるまる唄えることなんてまずない。与えられた時間の使い方に対する覚悟が違う」と言ってました。

 いやぁ慧眼ですな。
(高村)

歌の手帖 2019年12月号 | 歌の手帖,2019 | 歌の手帖社 utate online

【公式SNSを見る】
error: コンテンツは保護されています