UTギターズ真打登場

出ました久々のUTギターズ、満を持しての真打登場は銘器・ギブソンES-335!
日本ではセミアコ、英語圏ではシンラインと呼ばれるこのタイプはフレディ・キングやチャック・ベリーの昔からRADWINPSの今日に至るまで、一度たりとも定番の地位から外れたことのないエレクトリック・ギター王道中の王道。写真は12月11日、東京・京王プラザホテルで行われた宮路オサムさんのショーでバックを務めたギタリスト氏のものです。

 米ギブソン社がES-300番代のこのシリーズを発表したのは1958年のこと。すでにレス・ポール・シリーズで新時代のギターたるソリッド・ボディ・ギターに対する市場の反応を感じ取っていた同社は、従来のフルサイズ・ボディとソリッド・ボディ両者の長所を併せ持った製品を模索していました。

 ボディの厚さを従来の半分とし、レス・ポールで得たソリッド・ボディ構造のノウハウを移植する格好で、アコースティック・ボディという本来の性格は活かしつつ、ネックの付け根からエンドピンまで、ちょうど弦が張られている部分だけを木材で固め、f字型サウンド・ホールのあるボディ両ウイング部分はホロウ構造を残したこの設計はまさに慧眼。

 当時のギブソン社クラフトマンの発想と熟練には畏敬の念を覚えますが、そもそもはレス・ポール自身発明の試作器「ログ」が元ネタだというのが現在の定説であるのも確かです。アコースティックな鳴りをもち、ソリッド・ギターならではのサスティン(音の伸び)も得られ、しかもフィードバックに強く、何よりクラシックかつ近代的な外観が美しいこのモデルは、当初からスムーズにユーザーに受け入れられたといいます。

 代表的なエンドユーザーのリストは、そのままロックの紳士録となるでしょう。前述のF・キングやベリーのみならず、王者BB・キング、ジョニー・ギター・ワトソン、エリック・クラプトン、エルヴィン・ビショップら名だたるブルーズメン、速弾きの開祖アルヴィン・リー、アメリカン・ロックの雄・ドゥービー・ブラザーズのパット・シモンズ、70年代のフュージョン・ブームを牽引したラリー・カールトンとリー・リトナー、オアシスのノエル・ギャラガー、ニルヴァーナからフー・ファイターズで新時代を築いたデイブ・グロール。ジョージ・ハリソンが345を、キース・リチャーズが355を一時期、使っていましたし、イーグルスのヒット『言い出せなくて』でドン・フェルダーが弾いているのも335だそうです。その用途の幅広さから、大村憲司さんや松原正樹さんら腕利きのスタジオ・ミュージシャン達に愛用されたのはマニアの皆さん先刻ご承知の通り。

 さて写真のギタリスト氏のモデルはサンバースト・フィニッシュに丸く小さいいわゆるドット・ポジション・マーク、スタッド(ストップ)・テイルピースという仕様で、これは50年代のオリジナル仕様のおそらくレプリカでしょう。この日のステージでもド演歌からハードなロック・ギター・ソロまで、この一本で自在に表現しておられました。

 今のシーンで主流となっているポール・リード・スミスなんかが”誰が弾いても、そこそこ良い音が出せる”ギターであるのと比べると(語弊失礼)、335は名手がその手腕を発揮するのに最適の楽器だと申せましょう。
(高村)

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