キーンさん、安らかに

 日本文学研究者のドナルド・キーンさんが亡くなりましたね。私は迂闊にもこの方を存じ上げませんでしたが、三年ほど前のNHKの伝記ドラマ(川平慈英さんが演じていました)で初めて知りました。

 面白いと思ったので、さっそく本を一冊読んでみました。司馬遼太郎さんとの『日本人と日本文化』(中央公論社刊)という対談です。特に興味深かかった箇所の大意をご紹介しましょう。

キーンさん「日本人はいつも何が日本的かということについて心配する。意識して特徴を出そうとすると不自然なものになるのではないか」
司馬さん「大賛成です。あまり日本的なものとしてがんばりすぎると、いやらしいものになります」

 演歌の歌い手、作り手の多くは“日本の心”について大いなる自負を持っておられると思いますが、これは同時に“いやらしいもの”になってしまう危険もはらんでいるのかな、難しいものだな…というのが率直な感想であります。

対談が行われ、出版されたのが昭和47年(1972年)というのも驚きです。目からウロコが落ちる、実に面白い本でした。キーンさんのご冥福を心からお祈り申し上げます。
(高村)

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