笠置シヅ子さんをモデルにした
NHKの朝ドラ「ブギウギ」は
大好評の中、
3月で終わりましたが、
笠置シヅ子さんを見出して、
彼女のほとんどの歌を手掛けたのは、
作曲家・服部良一先生。
「ブギウギ」では
羽鳥善一という役で、
草彅剛さんが演じてましたね。
歌の手帖5月号の巻末楽譜では
その作曲家・服部良一先生の
特集をしております。
楽譜掲載曲は
①『別れのブルース』(淡谷のり子)、
②『一杯のコーヒーから』
霧島昇、ミス・コロムビア、
③『湖畔の宿』高峰三枝子、
④『蘇州夜曲』渡部はま子、霧島昇、
⑤『夜のプラットホーム』二葉あき子、
⑥『胸の振子』霧島昇、
⑦『青い山脈』藤山一郎、奈良光枝、
⑧『銀座カンカン娘』高峰秀子、
⑨『大空の弟(ブギウギVer.)』
福来スズ子(趣里)、
という9曲。
もうほとんどが
日本の大スタンダードナンバーです。
今回、服部良一先生の
巻末楽譜特集を担当するにあたり、
そのオリジナル音源を聴いたんですが、
いや、本当に感動しました。
というのも、
ほとんどが昭和10年代~昭和20年代前半
に録音されたものなので、
僕は曲は知っていても、
オリジナル音源は
ちゃんと聴いたことがなかったんです。
服部作品は
色々な歌手の方の
アルバムのカバー曲や、
コンサートでのカバー曲として
聴いたりするのが、
ほとんどだったんですよね。
つまり、オリジナル曲を知らないで、
カバー曲として歌を知っていたんです。
『服部良一の世界 ~青い山脈~』
(COCP-42069~70)
↑これでオリジナル音源がほぼ聴けます。
この頃の録音って、
演奏するバンドさんと一緒に歌手の方が
いっせいのせ!でレコーディングする
いわゆる一発同時録音。
今で言うザ・ファーストテイクですね。
現在のレコーディングは
演奏を先に録音して、
ボーカルは後で録音。
しかも何度も録り直しできますし、
間違ったフレーズだけを
やり直したりもできます。
更に言えばパソコンで
音程のズレや、リズム感のズレも
後から簡単に修整できますから。
服部良一先生の代表作が
録音された頃は、
そんなことができるわけなく、
演奏も歌も
どちらか間違ったら
最初からもう一回の
超緊張の一発同時録音。
物資がなかった時代だけに、
そんなに何回も録音
できなかったでしょうし。
それなのに、
その歌唱の完璧さ、
その歌唱の魅力に驚きます。
そして服部良一先生の書いた
メロディは
品があって、粋でお洒落。
音楽的教養も高く、
楽典の理論をしっかり知っていながら、
そこに洋楽の要素なども取り入れる
遊び心もあるんですよね。
『蘇州夜曲』とか『胸の振子』とか、
今もその上質なメロディの魅力が
錆びることなく、輝いていると思います。
時間的耐久性のある、
宝石のようなメロディです。
『ブギウギ 歌の大傑作集』(COCP-42222)
今回の巻末の最後に入れた
『大空の弟(ブギウギVer.)』
福来スズ子(趣里)。
これは戦争で大切な弟を亡くした
笠置シヅ子さんの想いを、
服部良一先生が彼女の気持ちを汲んで
描いた幻の作品。
音源は残っておらず、
草稿のような楽譜が
2019年に発見されました。
その楽譜から、
服部良一氏の孫である
服部隆之氏が編曲して
朝ドラ「ブギウギ」用に
作ったバージョン。
例えばブギウギVer.では
ドラマに合わせて六郎
となっていますが、
実際のシヅ子さんの弟は八郎。
歌詞が
○○○部隊、○○方面
と(伏せ字に)なっているのは、
戦地から送られて来る弟さんの手紙が
軍部の秘密を守るために、
具体的に場所などを書けなかったことから、
伏せ字にして、○○○となっているそうです。
戦争の哀しみが○○○に込められているんですね。
他にも敵性語を日本語に置き換えたり、
当時の厳しい規制の中で書かれた歌詞なんです。
そんな作品が戦後79年の時を超えて
甦る…ということにも感動します。
なお4月17日に発売される
神野美伽さんによる
笠置シヅ子さんのカバーアルバム
『SIZUKO! QUEEN OF BOOGIE』
には、
『大空の弟(ブギウギVer.)』
とは異なる『大空の弟』が
ボーナストラックで収録されています。
神野さんの笠置ブギーは
大胆で繊細で豊潤で、
とても魅力的ですよ。
5月号の巻末では、
服部良一先生の手掛けた
笠置シヅ子作品を掲載しませんでしたが、
『東京ブギウギ』をはじめ、
『ラッパと娘』『アイレ可愛や』
『ジャングル・ブギー』『買物ブギー』など、
笠置さんの代表曲の楽譜は
2023年12月号に掲載しております。
この12月号の巻末楽譜特集
「笠置シヅ子の世界」ですね。
もちろんすべて服部良一作品。
では、
歌の手帖5月号をよろしくお願いいたします。
村田
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