伊福部昭先生の音楽

去年ブームになった「シン・ゴジラ」ですが、私は“全身アカギレのあんな痛そうなゴジラは嫌だ”と思って観ませんでした。先日テレビで放送されたので遅ればせながら拝見いたしました。

 最新のゴジラはひたすら気持ち悪く怖く、やっぱりイヤでしたが、ゴジラという映画は元々、昭和29年の第5福竜丸事件をモチーフに制作されたと聞いています。だとすれば「シン…」はシリーズ中、原点思想に最も忠実に作られた作品なのでしょう。

 最初のゴジラへのオマージュと思しき場面がいくつも見受けられました。そもそも顔やカタチ自体、最初のゴジラの造形に歴代で一番似てますし。設定や演出でオマージュを思わせたカットは

1. 東宝クレジット映像にかぶる足音と咆哮

2. 品川で最初に暴れる

3. 銀座の時計台が出てくること、東京タワーが出てこないこと

4. 避難の場面、避難所の場面、女声コーラス

5. 仰角でゴジラの顔を仰ぎ見るカット

何より、本編冒頭のカットが海船の軌跡だということと、ゴジラ打倒の鍵を握る学者が、自身の発明の兵器転用を憂いること。

ところで、主要な場面の音楽は伊福部昭先生のオリジナル・スコアが大々的に使われており、これは嬉しかったです。

 先日、松川未樹ちゃんの現場でアイヌ舞踊を拝見しましたが、北海道出身の伊福部先生は原風景としてアイヌの音楽から大変大きな示唆を受けていたといいます。作曲家としての出世作『日本狂詩曲』や後年の『リトミカ・オスティナータ』にはそんな先生の出自がよく反映されています。

 子供の頃映画館でゴジラ映画を観て、西洋のクラシックとも日本の歌謡曲とも違う独特なハーモニー感覚を持った音楽に魅了されたものです。大人になってから教会旋法のドリアン・モード、リディアン・モードを勉強し、更に今の仕事に就いて古賀先生の『誰か故郷を想わざる』(霧島昇)等を聴き直し“ゴジラ音楽のあの音はこれだったのか”と目からウロコが落ちたものでした。

↓迎撃の場面の音楽

ド・レ・ミ・ファ♯・ソ~という音階です。

(高村)

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