3月号の巻末楽譜特集は、
作詞家・松本隆さんの特集。
※今回は昔から好きな作家さんなので、
マニアックな長文になることを、
お許しください。
松本隆さんと言えば、
今回の特集でも
楽譜を掲載させていただいた、
『木綿のハンカチーフ』(太田裕美)
『ルビーの指環』(寺尾聰)、
『赤いスイートピー』(松田聖子)
『冬のリビィエラ』(森進一)
などの大ヒット曲をはじめ、
数々のヒット作を手掛けた
ヒットメーカー。
松田聖子、近藤真彦、
小泉今日子、薬師丸ひろ子、
斉藤由貴、中山美穂などの
作品を手掛け、
1980年代に学生だった僕には、
日本のヒットチャートに出る
歌の作詞家と言えば、
松本隆さん!
というくらいの印象でした。
今回の巻末楽譜特集担当は
原田ですが、
楽曲の解説などは
僕が書かせていただきました。
でも、本当はもっともっと
書きたかった
面白いエピソードが
色々あるんですよね。
というのも僕は、
今回の楽譜にも掲載した
『さらばシベリア鉄道』を
唄っている大滝詠一さんが
好きなこともあり、
その大滝さん経由で、
松本隆さんのことも
自然と知っている事が多かったんです。
松本隆さんと大滝詠一さんは、
日本語で日本のロックを
確立しようとした
伝説的ロックバンド
「はっぴいえんど」の
メンバーでした。
松本さんはドラム、
大滝さんはボーカル&ギター。
ちなみに、
細野晴臣さんがベースで、
鈴木茂さんがギターです。
これは家にあった
はっぴえんどの
名作アルバム『風街ろまん』。
ここに今回の巻末楽譜特集でも
掲載した『風をあつめて』
が収録されています。
同曲は矢野顕子さん、
太田裕美さん、
また和田アキ子さんや、
最近でもオロナミンCのCMで
サカナクションの山口一郎さんが
カバーしている名曲。
さて、
大滝詠一さんの音楽は
その超マニアックさゆえに、
音楽・放送・広告業界に
ファンがとても多いことから、
(大滝さんのファンを称して
ナイアガラーと呼ばれています)
今でも彼の歌は
CMなどで使われることが多いです。
また大滝さんの圧倒的知識量から、
大学教授などの文化人のファンも多く、
大滝さんの研究書などもあるくらいです。
大滝さんと言えば、
代表作の1つがこの
『A LONG VACATION』
(1981年)。
『ロンバケ』と称される
ジャパニーズ・ポップスの
最高峰と評される大名盤で、
我が家には3枚の
(CD選書盤、
20周年盤、30周年盤)
同アルバムがあります(笑)。
前述の
『さらばシベリア鉄道』
もここに収録されています。
そして10曲中9曲が、
松本隆さんの作詞です。
(残り1曲の作詞は大滝氏)
また本作は
日本におけるCD作品の
邦楽部門の第一号。
このアルバムには、
1曲毎にたくさんの
伝説的エピソードがありまして、
その中でも有名な一つの
お話を紹介させてください。
アルバムのオープニングを飾る
『君は天然色』。
最近でもサントリーのCMで
流れていた名曲ですが、
この曲では
ウォール・オブ・サウンドという
音作りをする手段の一つとして、
アコースティック・ギターで
2拍3連のコードカッティングを
5人の売れっ子ギタリストが
同時録音で弾いています。
今なら1人のギタリストが、
5チャンネル分、
5回演奏を録音して、
それを後で重ね合わせれば良い、
と考えるでしょう。
そして当時の録音機器も
すでに24chマルチがあったので、
そういう多重録音は可能でした。
しかしそれでも
大滝さんが同時録音にこだわったのは、
5人の違う人間(ギタリスト)が、
同時録音で2拍3連を一斉にかき鳴らすことで、
その微妙なリズム感の違いから生まれる
揺らぎが、
魅惑的な音の厚みを生み出すからです。
(ドンカマも意図的に使わなかったとか)
こんな贅沢すぎて、
無駄にも思えることは、
合理的な考え方が主流の
今では不可能だと思います。
でも、こういう
無駄にも思えることが、
音を楽しむ、という
音楽の本質につながる…
このアルバムを聴くたびに、
それを実感します。
今はアルバム制作で時間をかけても、
1ヶ月とかでしょうけど、
このアルバムは
制作に約1年かけたらしいです。
だから1曲ごとに
大滝氏の
こだわりがいっぱい詰め込まれて
作られているのです。
そんなマニアックな話は
置いておいても、
名曲がいっぱいのアルバム。
『さらばシベリア鉄道』はもちろん
(同曲は元々は太田裕美さんに提供した作品)、
『恋するカレン』なんかも
演歌・歌謡曲好きの方でも
好きになってもらえる、
カラオケで楽しめる名曲だと思います。
残念ながら大滝詠一さんは
2013年12月30日に
逝去されましたが、
いつか大滝詠一さんの
巻末特集もしてみたいです。
森進一さん『冬のリヴィエラ』をはじめ、
小林旭さん『熱き心に』など、
演歌系の方に書いた名曲も多いんですよ。
村田
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