亡くなった作曲家・北原じゅん先生の「お別れの会」取材へ向かう道すがら、先生のお書きになった「レインボーマン」主題歌を反芻しておりました。
番組オープニングの曲は物語の原作者であり、主題歌作詞者でもある川内康範先生の「肌や言葉の違いはあれど、人間誰でも皆同じ」というメッセージが眩い、明るく元気なロック歌謡調の作品です。
高潔な理想に溢れた素晴らしい曲なのですが、そう言えばエンディング曲も良かったなぁ、と思い出しました。
力を得た人間の宿命と、一世俗人としての夢との葛藤を哀しく苦しげに吐露する、子供むけ番組とは思えない重さのバラード『ヤマトタケシの歌』。レインボーマンに変身していない時の主人公のテーマ・ソングで、これも名曲です。
そう言えばこの曲がかかるエンディングの映像はどんなだったかな…。なにしろ40年以上昔のこと、記憶違いもあるかもしれませんが、主人公の格闘場面だったと思います。
オープニングはヒーロー物らしく、七色に变化するレインボーマンが躍動する、それは鮮やかなものでしたが、エンディングの方は格闘場面とは言え、正義のヒーローとしての活躍を表現したものではなく、主人公の私生活における奮闘を暗示していたように思います。
次々と殴りかかってくる町のゴロツキどもを、黙々と投げ飛ばし撃退し、最後は幼い妹の肩を優しく抱き、静かに去ってゆく主人公。人物は全編シルエットのみ、背景の真っ赤な夕陽が印象的でした。
涙が溢れました。子供の頃のことを楽しく思い出せるのは両親のおかげでしょうが、幼き日々に彩りをそえ、ヒーローの活躍を通じて正義・愛・友情・夢…人生の基本を教えてくださった川内康範先生、音楽を通じてその教えを今も鮮やかに心に蘇らせてくださる北原じゅん先生。
ああ先生、先生方のお仕事のお陰で、今私は曲がりなりにも、最低限の人の道だけは外すことなく生きてゆくことが出来ています。そんな感謝と惜別の涙でした。
人間みんな仲間だ! そいつを壊しちゃいけない!
だから行くんだ! レインボーマン!
(高村)
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