ロックなコード

 皆さんお元気ですか。

先週末、塚原哲平さんにインタビューしました。新譜は『錦を上げて』(ホリデージャパンTJCH-15649)で、4月22日発売です。

 取材するためには当然、予習をするわけですが、最初に聴いた時、これはロックだと思いましたよ。

 下記は曲中で表題の言葉が出てくる、所謂サビ部分のコード進行です。1番上が本来のソレなんですが、実は僕の耳には上から2番目のように聴こえましてね。それで、おおロックだ、ジミヘンだ! クリームだ! なんて思った訳でして。

違いは2小節目1拍目がFマイナーかFセブンか、です。メロディーとの兼ね合いではどちらでも正解なんですが、歌謡曲の世界で普通にアレンジを考えたらFmでしょう。これがF7だとロックっぽく聴こえるんですが、これはもしかしたら、作曲者がHANZOさんだからかもしれない。

 HANZOさんご自身の音楽的ルーツがロックなのか、日本のポップスなのかはよく存じませんが、CmのキーでF7を使うという発想が、ごく自然に出てくるんだろうな、と思うんですよ。

 それは年代や音楽の好みというより、音楽のよりどころがギターだからでしょう。ギターで作曲する人だと、例えばAmのキーでDやD7、EmのキーでAやA7を押さえるのに、抵抗感なんかまったくないでしょう。手クセみたいなもんです。有名なレッド・ツェッペリンの『天国への階段』なんか典型的です。

 これがピアノや、ブラバンのアレンジだったら、マイナー・キーで4度を(マイナーセブンスじゃなく)セブンスにするのは、定石は定石だけど、比較的“こっちにするか”感がある方なんじゃないかな。

 くだんの哲平さんの曲では、譜面でハッキリFmと表記しているんですが、ハードロックによくある、パワー・コードのような音色をHANZOさんが想定して作曲したからF7に聴こえるんじゃないかな、なんて想像しました。パワーコードってルートと5度の2声しかないコードで、和声的にはこれだとメジャーかマイナーか決まらないはずなんだけど、倍音で3度が鳴って、耳にはメジャーっぽく聴こえるもんらしい。

 実際、曲の最後で同じメロディーをもう一度くり返す時(3回目)、ここはオケがアルペジオだけになって、はっきり3度(ラの音)が鳴っているのが分かる。ここはホントにF7。ただし1番、2番はどっちなのかよく分からない。

 おなじメロをくり返す時、1部だけコードを変えてメリハリをつけるのはよくあることだから、これは譜面通りと考えるのが一番妥当でしょう。ただ個人的には、全部F7の方がカッコいいと思うんだなぁ。演歌じゃなくなっちゃう、昭和歌謡風ですらなくなっちゃうけど。

 更に言わせていただくと、一番下みたいにF7のあとをA♭にすれば、もっとロックっぽくなるなあ、なんてね。失礼しました。

 どんなメロディーなのかはシングルの発売と、本誌の「歌の市」を待っててくださいね。発売日の関係もあって「歌の市」掲載は6月号になるか7月号になるか未だ決まっていませんが、インタビューは次号、6月号に掲載。哲平さんの、歌人生にかける覚悟が聞こえてくる歌ですよ!
(髙村)

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