昔、テレビで歌番組を視ていた時のこと。モモエさんが当時大ヒット中の『イミテーション・ゴールド』を唄っていたのですが、♪彼が窓辺で話しかけるわ~に呼応するギターのオブリガードが変で、子供心にも何だこりゃと思ったことがありました。
どう変だったか、はっきり覚えています。レコードに収められている正しい符割りは譜例(1)ですが、くだんの歌番組では(2)のように演奏されていたんです。キーはFシャープ・マイナーです。
こうして譜面に起こしてみると、なぜああなっちゃったのか分かる気がします。あたまの休符を、本当は8分休符のところを4分休符と間違えたのでしょう。
写譜屋さんが書き間違えたのか、ギタリストが読み間違えたのかは分かりませんが、聴覚上は相当違って聴こえるものの、譜面で見ると、たった一箇所のミスに過ぎなかったことが分かります。
当時は、このギター下手だなぁ等と生意気にも思ったものですが、当時は歌謡曲もテレビの歌番組も全盛期。写譜も大急ぎなら、現場の演奏も初見だったのではないでしょうか。つまり写譜屋さんもギタリストさんも、下手どころか、えらく有能な人達だったのだなと分かるのです。
音楽の世界では、半音や半拍の違いは天地ほどの違いであって、プロは「まぁいっか」で済ましちゃいけないんですが、ここではそれは別の話としましょう。
さて、なんでいきなりこんな昔のことを書くのかと申しますと、確か先週の連休最終日だったと思いますが、テレビで「歌姫ベスト100」みたいなのをやっていて、前述の『イミテーション・ゴールド/違うオブリガードバージョン』(笑)映像が流れたんです。
唄い出しの耳につく箇所ですからね、すぐ分かりました。当時中学生の私に分かるくらいですからね、ご本人やスタッフが、あのまま間違いを放置するはずもありません。てこたぁ42年前視たのと同じ映像にドンピシャで再会できたと考えてもいいのではないかしら。
あの曲がどれくらい売れたか、一体何回テレビでオンエアされたであろうかを考えると、僥倖に近いかもしれない。何だか(意味もなく)感慨深いです。
1977年の盛夏。私は14歳で、ギターを初めてまだ半年かそこらでした。
(高村)