2024年11月26日
声楽家・大貫裕子さんの門下生発表会を観てきました。
http://onuki.music-web.info/
いいものを見せてもらった。歌の感動ってもんがどこから来るのか、少し分かったように思います。
ハセガワさんの『くちなし』は良かったなあ。耳をことさらにそばだてずとも、歌詞の言葉が物語として自然に聞こえてきた。
しかもそれが芝居じゃなく、ハセガワさん自身の物語として聴こえた。
歌にその人の人生を垣間見ると、聴き手は感動するんでしょうなぁ。
それに技量。技量はもちろん大事。でも例えば声量にしても、声の質量がいくらか足りなくても、輪郭さえしっかり取れていれば、フレーズは聴こえてくるもんです。墨とか鉛筆とか、タッチが多少薄くても、読む相手の立場にたって丁寧に書かれた手紙は、まごころが伝わるものね。
この種の感動は、演じ手が若い子より年配の方が有利かもしれないね。声量や高音域で多少苦しそうでも、そこにまたドラマが見えるから。人としての年季が味を出すから。顔や容姿が歩んだ歳月と年輪を想起させるから。
ただし本当に芸術や芸能に生涯を捧げようと思う人は、最初から物欲しげに味とやらを狙ったらダメでしょう。年季とか味とかって、誠実に研鑽をつんだ人が長い時間の末にもらえるご褒美なのでしょうから。
出演者の中には歌の道を志している若い子たちが少なからずいました。みんな地道な努力が知れるステージでした。あの子たちには年輪だの味だの、今は無縁でしょう。そんな彼ら彼女らの30年後を、見れるもんなら見てみたい。
大貫先生の求心力と実行力に敬意を表します。お疲れ様でした。
(高村)
歌の手帖 2018年7月号 | 歌の手帖,2018 | 歌の手帖社 utate online