さらば演歌野郎


 坂井一郎さん、『おまえは泣くな』でインタビューに行った時、あなた話してくれたね。

お父様から教わったという、男の美学。

「男たるもの、売られたケンカは正々堂々、受けて立て。ただし、自分からは絶対売るな」

あのビデオの立ち回りシーン、カッコよかったなぁ。

凶器を手に襲いかかってきた刺客を、素手で叩きのめす芝居、本物の映画俳優みたいだった。

今あらためて、あなたのレパートリーを聴きなおすと、実に“正々堂々”演歌の本道を歩いていたのが、よく分かるね。

最後の『男の日記帳』も、アレンジは洒落てたけど、歌は本物の演歌だった。

中川英二郎さんのトロンボーン・ソロ最高だけど、やっぱりあなたの歌が主役だね。当たり前だけど。

うちの歌謡祭のゲストに出てくれた時は、打ち上げまで付き合ってくださったね。

上の連中が先生方の接待に追われてる間、ずっと僕の話し相手になってくれたっけね。

「自分からケンカは売るな」よく覚えとくよ。

さよなら坂井さん。

(高村)

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