ギター・ラ・アークティカ

 取材現場でよくお目にかかる報道関係者の中でも長老格と申せるA紙のYさん。10年来の面識ながら、実は土曜日、浅草の松原健之さんの現場でお会いした時、初めて彼の方がトケ・ギタリスタだと知りました。何んたってパコ・デ・ルシアに会ったことがある、いえ会ったことがあるどころか、取材のみならず気に入られて楽屋へ呼んでもらったってんだから、このスゴさたるやペレにドリブルを習った、アインシュタインに幾何を習った、に匹敵するレベルです。

 …と言ってもY氏ほどの記者ならマドンナと呑んだことがあったっておかしかないですけどね。

 フラメンコ・ギターってのはクラシックと一見奏法も楽器も似ているけど実は全く、正反対といってもいいくらい違う。

ジャズとも違うけどムズかしさ、奥深さはいい勝負。

 パコ先生ご自身は「フラメンコはジャズと比べたら音階は単純だがその代わりリズムが複雑」なっておっしゃってたけど、何のなんのコードもすごい現代的で前衛的ですよ。そのうえ、魂を揺さぶる妖気ときたら能楽やゴスペル、追分に引けを取らないのがフラメンコ。とにかく一度やみつきになるともう逃げられない音楽なんですぞ。

 演歌歌手でも松永ひとみさんなどは、かなり本格的に修行なさっているようですが、日本でフラメンコっていうと大抵はバイレ(踊り)に関心が集中してしまうんですなぁ。直木賞作家の逢坂剛先生によれば、フラメンコはカンテ(歌)、バイレ、トケ(ギター)の三つが一緒になって、初めて成り立つもの。演歌の酒・港・涙みたいなもんです(それはまた別の話だろ)。

 いつかYさんのような方に、本気でレクチャーしていただきたいものです。

(高村)

歌の手帖 2019年11月号 | 歌の手帖,2019 | 歌の手帖社 utate online

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