ど愚直

「ド演歌とはよく聞くが、どロックという言葉は知らなかった」と本誌に書きましたが、コレがソレです。ただのネオン切れでした。

かつて若者たちの反抗・革新のシンボルだったロックも、すっかり伝統芸能となってしまった昨今であります。そんな時代にあっても、ロックの初期衝動、いわゆる“ロック魂”を失うことなく走り続けているロッカー達が存在することも事実。

日本なら矢沢永吉、本場英米でもポール・マッカートニーやブルース・スプリングスティーン、そして「ド演歌」を唄い続けている北島御大、演歌不遇の時代にあって、ひたすら「ド演歌」を追求し続けている秋岡秀治さん。

商売より信念、愚直に「どロック」「ド演歌」であり続けることは、何とカッコいいことか。

さて話は違いますが、最近珍しい楽器を見ましたのでご覧にいれましょう。ステージが暗かったのでメーカーや年代はわかりませんが、膝の上に乗せてひく、いわゆる「ラップ・スティール・ギター」です。

ギターを抱えず、膝の上に横に寝かせて弾く奏法はアメリカのデルタ・ブルース地帯で、今世紀初頭から行われていたといいます。ラップ・スティール・ギターはこの奏法に特化したタイプのギターです。左手は弦を指板のフレットに押さえつけるのではなく、金属の棒や瓶の口などを使い、弦の上を滑らせるように動かして音程を出します。傍から見ると、ギターよりも鍵盤楽器を弾いているように見えます。

初期のブルースや、ハワイ音楽に使われていましたが、それらの影響を受けてカントリーでも多用されるようになりました。日本ではやっぱり、ハワイアンの楽器というイメージが強いですね。プゥイ~ンというこの音色を聴くだけで、その場の空気がリゾートになります。伊豆や熱海の海岸、冷房の効いたホテルやレストラン、お土産もののお店。子供の頃の、家族旅行の記憶と結びついています。

この楽器も時代とともにあまり使われなくなり、似た音色を出すなら、普通のエレクトリック・ギターの「スライド奏法」で済ます、というのが一般的になってしまいました(中西りえちゃん新譜のカップリング曲『東京かぐや姫』イントロで聴くことができますよ)。とは言え、やはり本物でなくては本物の音色は出せません。当たり前ですが。

ムード歌謡全盛期には欠かせない楽器で、最近は加門亮さんがこの楽器をフィーチャーした新曲『アイラブユー』を出しました。

10月6日、東京・早稲田のホテルで行われた美月優ちゃんのステージをサポートした「池ヶ谷ヤスオ&サイドワインダー」のリーダーは、この「本物」の音色に、愚直にこだわってこられたのでしょう。いい音でした。

(高村)

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