日本のオーディオ製品

 皆さんお元気ですか。

先月のおわり、松永ひとみさんのインタビューで日本クラウンさんに行きました。

通された会議室に置いてあったDVDプレイヤーにセットされていたのが、おお10モニ! ヤマハ製モニター・スピーカーの銘記NS-10Mです。

’70年代はオーディオが趣味として若者たち(だいたい男性でしょうが)にもてはやされ、同時に日本製品が世界の市場を席巻した時代でもあります。このNS-10は元々先行機種の廉価版として開発・発売されたものらしいですが、趣味の良い外観と高性能が評価されベスト&ロングセラーになりました。

特筆すべきは、本来民生用(しかも前述の通り廉価版)を意図して設計された製品でありながら、プロの音響技術者から高く評価され、レコーディング現場の備品として定着したという事実です。

本誌で紹介している各社のCDが作られている現場へ取材に行くと、ほぼ例外なくこのNS-10が使われているのを目にします。アレンジャーさんや宅録派のアーティストさん達が自宅に装備していることも多いです。

黒い木の筐体、白いスピーカー・コーンで、一目でそれと分かる外観はオーディオ・マニアにもプロのエンジニアにも人気を博し、何より分離がよく透明感のある再生音は現在でも抜きん出た実力を示します。

ホンダの小型車、ソニーのカセット・テープレコーダー、カシオの電卓やデジタル時計、そしてズームのギター用マルチ・エフェクターなど、庶民のために作られた製品でありながら、作り手の意に反してプロに高く評価され愛用された例は、かつての日本工業製品には枚挙にいとまがなかったようです。

海外に行くとよくわかりますが、トヨタ、ニッサン、カシオ、そしてヤマハ…日本製品は世界の隅々まで浸透しています。品質だけでなく、営業さん達の身を粉にした努力と奮闘が伺われます。

量の点ではもはや世界の工場ではなくなった昨今の日本工業ですが、質の点では昔日のプライドを失わず頑張ってほしいものです。メーカー勤務の皆さん、頑張ってね。

(高村)

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