偉大なる、なかにし礼先生に捧ぐ

歌の手帖5月号の

巻末楽譜特集は

昨年12月23日に逝去された

作詞家・なかにし礼さん

の追悼企画です。

なかにし礼先生は

たくさんの大ヒット曲を

手掛けていらっしゃるので、

10曲に絞り込むのは大変でしたが、

作詞家・なかにし礼を語る時に欠かせない

節目の作品…というコンセプトで

以下の10曲を選んでみました。

①知りたくないの/菅原洋一

②恋のフーガ/ザ・ピーナッツ

③天使の誘惑/黛ジュン

④人形の家/弘田三枝子

⑤今日でお別れ/菅原洋一

⑥別れの朝/ペドロ&カプリシャス

⑦心のこり/細川たかし

⑧石狩挽歌/北原ミレイ

⑨北酒場/細川たかし

⑩まつり/北島三郎

それぞれの作品の重要性、

それぞれの作品についての

解説は

本誌をご覧ください。

実は、なかにし礼先生に

1回だけ取材させていただいた

ことがあるんです。

2015年のことでした。

これがその時の写真。

巻末ではこの時の

別カットを使用しています。

いや、やっぱり

なんか屈強な

オーラがあって

かっこよかったですし、

お話もとても面白かった。

そこは

大ヒットメーカーでありながら、

直木賞作家でもありますからね。

語彙力も豊富ですし、

当然、

独特な感性を持ってらっしゃいます。

何より、圧倒的な人間力が

ある先生でした。

例えば

若い頃から(新人の頃から)

自分の信じたものを貫くために、

レコード会社と、

時には歌手の

方々と闘いながら、

生き続けた方です。

歌詞を書いた時に

「これはヒットする!」と確信した歌は、

かなりの確率でヒットしたそうで、

そういう作品を作った時は、

まさに命がけのパワーで、

その歌を猛プッシュしたそうです。

なにしろ上の10曲以外にも、

『愛のさざなみ』(島倉千代子)、

『港町ブルース』(森進一)、

『恋の奴隷』(奥村チヨ)、

『手紙』(由紀さおり)、

『グッド・バイ・マイ・ラブ』(アン・ルイス)や、

意外なところでは、

ドリフターズの『ドリフのスンドコ節』や

『誰かさんと誰かさん』、

ハイファイセットの『フィーリング』

なんかもそうです。

そう云えば僕が小学生の頃、

なかにし礼先生の

『時には娼婦のように』が大ヒットしましたが、

子供心に、

ヘンな面白い歌だなぁ、と思いながら、

学校で友達とこの歌を、

(意味もよくわからず)

ふざけつつ

口ずさんでました。

大らかな昭和の時代です。

子供が『時には娼婦のように』

を学校で口ずさんでいたら、

今だったら大問題に

なりそうです(笑)。

子供の教育上は

かなりよろしくない

歌詞なので、

厳しいコンプライアンスの

今だったらテレビでも

唄えないんじゃないでしょうか。

でも、

最近はすぐに臭いものに

蓋をするようになりましたけど、

蓋をして

規制するのばかりが

正しいとは思えません。

多少の匂いに対して、

いちいち蓋をしなかった時代。

表現の自由が僅かにあった時代。

だからこそ、

良かったことも多いと

思うんですよね。

あと、

今回の特集のように、

昭和の歌謡曲の

大ヒット曲の歌詞の原稿を

打つ時、

いつも思うんですが、

少ない言葉数ながら、

贅肉がない表現で、

言葉一つひとつが

手垢にまみれてなくて、

想像力が広がる歌詞

なんですよね。

そして演奏時間が

だいたい3分前後。

ポップミュージックは

やはり3分が理想だと

感じます。

なかにし礼作品を聴くと、

ポップミュージックって、

こうであるべき、

と思います。

そんな

なかにし礼先生の

正しき日本のポップミュージックと

言える

ヒット曲の数々は

このアルバムでまとめて聴けます。

『なかにし礼と75人の名歌手たち』

(日本コロムビア COCP-39307-10)。

今月の巻末と合わせて、

ぜひ聴いてみてください。

改めて、

言葉の自由と

闘い続けた

なかにし礼先生の

ご冥福をお祈り申し上げます。

村田

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